ニュースの概要
格安航空券の比較・予約サイト「skyticket」で、外部からの不正アクセスが3件確認され、1400万件を超える個人情報が流出したと報じられた。うち1件では、流出した情報が実際に悪用された事実も確認されているという。利用者の多い予約サイトで、被害の規模が大きいことに加え、悪用まで確認された点が深刻である。複数の侵入が別々に見つかったことは、単発の事故ではなく、守りの穴が複数あった可能性を示す。詳しい手口や流出した項目の範囲は、今後の運営会社の発表を待つ必要がある。本稿ではこの件を、旅行予約サービス全体の構造の問題として読み解く。
引用元: 格安航空券比較・予約サイト「skyticket」で3件の不正アクセス、1400万件超の個人情報が流出し、1件の悪用も確認(INTERNET Watch)
分析・見解
3件の侵入が別々に見つかったことの重い意味
不正アクセスが3件というのは、入口が一つではなかった可能性を示す。たとえば、サーバーの設定ミス、委託先の管理画面、利用者のログイン画面は、それぞれ別の入口になる。どれか一つを塞いでも、他が開いていれば被害は続く。入口が複数あれば、侵入者は見つかりにくい場所から静かに情報を抜き取れる。
1400万件という規模は、日本の人口の1割を超える。もちろん同じ人の情報が重複している場合もある。ただ、会員だけでなく、予約の途中で入力された情報や問い合わせ履歴まで含むなら、影響は会員数以上に広がる。
旅行予約サイトの情報が狙われやすい理由
旅行予約サイトには、氏名、生年月日、電話番号、メールアドレス、旅程といった情報が一か所に集まる。航空券は搭乗者の名前を正確に登録する必要があるため、入力される情報の精度が高い。犯罪者から見ると、偽の連絡文を作るための材料として質が良い。旅程が分かれば「搭乗便の変更のお知らせ」のような、もっともらしい偽メールも書ける。
過去にも、旅行・宿泊の予約サイトでは同種の事件が繰り返された。2016年には大手旅行会社JTBの子会社で、約793万人分の情報が流出する事件が起きた。今回の規模は、それを大きく上回る。
悪用が確認された1件が変える対応の優先順位
漏えいは「見つかった時点」で終わりではない。悪用が確認されたということは、情報がすでに誰かの手に渡り、使われているということだ。この段階では、原因調査よりも、利用者への連絡と注意喚起の速さが被害の大きさを左右する。会員向けのお知らせが遅れるほど、偽の連絡が先に届く危険が高まる。
流出した情報の使い道は主に三つある。一つ目は、偽メールや偽SMSによるフィッシング(=本物そっくりの偽サイトへ誘導して情報を盗む手口)。二つ目は、他のサービスへのログイン試行。三つ目は、電話を使った詐欺である。同じパスワードを複数のサービスで使い回している人は、今回の被害とは別の場所で二次被害に遭うおそれがある。
安さの競争が守りの費用を削る構造
格安航空券の比較サイトは、1件あたりの手数料が小さい薄利の商売である。広告や送客の収益で成り立つため、利益を出すには利用者数を増やすことが先に立つ。一方、守りの費用は売上に直結せず、後回しにされやすい。「安い」ことを売りにする業界ほど、見えない部分の投資が削られる圧力が強い。この構造はskyticketだけの話ではない。利用者が会社を選ぶとき、価格だけでなく、事故後の説明の丁寧さも見る時代に入った。
ビジネスへの影響
予約サイトを使う人が今日やっておくべき三つの備え
まず、パスワードの使い回しをやめる。予約サイトと同じ文字列を他のサービスで使っているなら、すぐに変更する。管理にはパスワード管理ソフトを使うと負担が減る。
次に、二段階認証(=ログイン時にスマホなどで追加の確認をする仕組み)を、使えるサービスでは必ず有効にする。三つ目は、メールやSMSのリンクを直接押さないこと。航空会社や予約サイトを名乗る連絡が届いても、公式アプリやブックマークした公式ページから予約状況を確認する習慣をつける。
予約確認メールの保管にも注意が要る。メールには予約番号と氏名が並ぶため、不要になった古い予約メールは整理しておくと被害を抑えられる。
旅行・観光事業者が自社の点検で見るべき箇所
事業者側は、まず自社が持つ個人情報の棚卸しから始める。どの情報を、どのシステムに、いつまで残しているかを一覧にする。旅行後も使わない情報を保管し続けると、漏えい時の被害が増える。保管期間を決め、期限が来たら消す運用が有効だ。
次に、委託先と管理画面の点検である。外部の制作会社や運用会社に管理権限を渡している場合は、権限の範囲と、契約終了時の削除手順を確認する。管理画面に接続できる場所を絞り、ログインに追加認証をかけるだけでも、侵入の難度は大きく上がる。
最後に、事故が起きたときの連絡文を平時に用意しておく。誰が何時間以内に何を公表するかを決めておけば、発覚後の混乱を減らせる。