ニュースの概要
インドネシアの航空会社トランスヌサが、メルボルンとバリを結ぶ定期便を新たに開設した。初便は10月20日に飛び、当初は週4便での運航となる。11月15日からは毎日運航に増やす計画だ。片道運賃は299豪ドルからで、受託手荷物、飲料水、軽食を基本運賃に含める点を、従来型の格安航空会社との違いとして打ち出している。同社は豪州とインドネシア、さらに東南アジアをつなぐバリの拠点機能を強めたい考えだ。運賃に含まれる内容で選ばれる路線を目指す姿勢がうかがえる。新路線は、豪州からのバリ旅行市場で価格だけに頼らない競争を試す動きでもある。
引用元: トランスヌサ、メルボルン―バリ線を開設 11月15日から毎日運航へ(TTR Weekly)
分析・見解
基本運賃に手荷物と軽食を込める価格設計の意味
今回の発表で目を引くのは、片道299豪ドルからという数字そのものより、その中身である。日本円でおよそ3万円前後だ。受託手荷物、飲料水、軽食が基本運賃に入っている。従来型の格安航空会社(LCC)は、本体の運賃を安く見せ、手荷物や機内サービスを後から有料で足す方式が主流だった。トランスヌサは、その「後から足す」部分を最初から含めた。
バリ行きの旅行者は荷物が増えやすい。サーフボード、ゴルフ道具、家族分のスーツケース、帰りの土産物などだ。荷物の追加料金が積み上がる従来の料金表は、家族連れほど不満が出やすい。広告の安さではなく、支払う総額で比べてもらう狙いがあるとみてよい。
メルボルン線の毎日運航が示すバリの拠点化構想
メルボルンは豪州で有数の需要地であり、すでに複数社が飛ぶ。そこへ毎日運航を置く動きは、観光路線の追加にとどまらない。バリ(デンパサール)を、豪州とインドネシア各地、さらに東南アジアをつなぐ乗り継ぎの拠点(=ハブ)に育てる布石と読める。インドネシア国内にはジョグジャカルタやロンボクなど、豪州客が足を延ばしたい行き先が多い。バリで乗り換えられれば、客は豪州から一度の移動で複数の島へ動ける。
ただし、乗り継ぎは到着と出発の時刻が合わなければ成立しない。待ち時間が長いと、客は結局ジャカルタ経由や直行便を選ぶ。拠点化の成否は、運賃の安さより時刻表の組み方にかかっている。
週4便から毎日へ、段階的に増やす慎重な設計
10月20日に週4便で始め、11月15日から毎日運航にする。一見すると急拡大だが、実際は需要を見ながら増やす安全策でもある。新路線は最初の数週間で、予約の入り方や搭乗率の傾向がはっきりする。毎日運航になれば旅行会社も日程を組みやすく、週数便の路線より使い勝手が大きく上がる。しかも豪州の夏休みは12月中旬から始まる。その直前に毎日運航へ切り替えるのは、繁忙期の需要を取りこぼさないための時期選びと考えられる。
一方で、長距離路線は機材のやり繰りが難しい。一度の遅延が翌日以降の便に響く。毎日運航は便利さと引き換えに、運航の安定性という重い宿題を背負う。
就航記念運賃が終わった後に本当の勝負が来る
メルボルン―バリ間は、すでに大手とLCCが競う激戦区だ。価格の差は他社がすぐ追随できる。手荷物込みの運賃も、競合が同じ条件を出せば差別化の力は弱まる。長距離を飛ぶ格安路線は、過去にも低運賃で参入したあと、燃料費や需要の波で路線を縮小した例が少なくない。
最後に残る強みは、定時性、空港での手続きのしやすさ、バリでの接続の良さである。これらは宣伝では示せず、運航実績で証明するしかない。就航を祝う運賃が一巡した後に、通常運賃で客がつくかどうかが本当の試験になる。
ビジネスへの影響
豪州方面の見積りは総額で並べ直す
旅行会社や出張手配の担当者は、運賃表の最安値だけで比べると判断を誤りやすい。手荷物、機内食、座席指定、変更手数料まで足した総額で並べ直したい。トランスヌサのように基本運賃へ手荷物を含める会社が出ると、同じ299豪ドルでも他社の299豪ドルとは中身が違う。社内の比較表に「手荷物込みか」「飲食は含むか」「変更は可能か」の列を加えるだけでも、見積りの精度は上がる。
就航直後の路線は、運航が落ち着くまで時刻の変更が起きやすい。団体旅行や視察では、前後に余裕日を置き、代わりの便の候補も決めておくと安心である。
バリ側の事業者は到着時刻に合わせた受け入れを組む
宿泊施設、ツアー会社、送迎事業者にとって、毎日便は予約を組みやすくなる材料だ。ただし到着が早朝や深夜になれば、チェックイン前の荷物預かりや送迎の需要が増える。時刻が確定したら、半日の観光プランや休憩所の提供など、到着直後の数時間を埋める商品を用意したい。日本の地方空港でも、国際線の就航直後に同じ課題が出る。
増便後の1か月で確認したい三つの点
第一に、11月15日の毎日運航が予定どおり始まるか。第二に、記念運賃が終わった後の通常運賃がどの水準に落ち着くか。第三に、遅延や欠航がどのくらい出るかである。この三つがそろって良好なら、団体や法人需要にも勧めやすい。逆に一つでも崩れるなら、重要な日程には大手の便を主軸に置き、この路線は補助的な選択肢として扱うのが現実的だ。