ニュースの概要

ベトナムの格安航空会社ベトジェットは、2026年1〜9月の連結売上高が前年同期より41%増えたと発表した。税引後利益も黒字を確保している。この期間に運んだ旅客は2070万人を超え、運航便数は11万1700便に達した。路線は国内外あわせて223本で、うち国際線が176本を占める。東南アジアを軸に、中央アジア、欧州、南アジアへ網を広げてきた。さらに2027年1月には、ホーチミンとシドニー西部を結ぶ新路線を開く予定だ。急成長の勢いと、拡大路線の次の一手が同時に示された発表である。

引用元: ベトジェット、2026年1〜9月の売上高が41%増加(VietnamPlus)

分析・見解

売上41%増でも利益は売上の2%台にとどまる

売上が41%伸びた数字は力強い。1〜9月の旅客は2070万人超、運航は11万1700便だった。単純に割ると、1便あたり約185人を運んだことになる。180〜240席級の機材を、高い搭乗率で回し続けた水準だ。

ただし税引後利益は売上の約2.3%しかない。燃料費、機材のリース料、空港使用料は、客が増えても簡単には減らない。格安航空の利益は売上の勢いでは決まらない。座席をどこまで埋め、手荷物や座席指定といった追加料金をどれだけ積めるかで決まる。利益率が低い一桁にとどまること自体は珍しくないが、燃料価格や為替が少し動くだけで赤字に傾く薄さでもある。

国際線が約8割を占める路線構成の強みと重さ

223路線のうち国際線は176本で、全体の約79%を占める。国内線は残りの47本にすぎない。ベトナム国内線は短距離で運賃が低く、競争も激しい。国際線は1便あたりの収入が大きく、海外の観光需要の波にも乗れる。

一方で国際線は、相手国の規制や空港の混雑、燃料価格の影響を受けやすい。距離が延びるほど機材が空を飛ぶ時間が長くなり、1機で稼げる往復回数は減る。路線を増やすほど、機材のやりくりという運用の難しさも同時に増える。

西シドニー線は新しい空港に先に入る賭けである

2027年1月に始まるホーチミン〜西シドニー線は、象徴的な一手だ。西シドニーの空港は新しく、発着枠や使用料の交渉で、新規参入組が動きやすいと考えられる。混み合った既存空港で大手と枠を奪い合うより、先に入って定着させるほうが費用を抑えやすい。

もう一つ見落とせない点がある。西シドニー一帯にはベトナム系住民が多く暮らす。観光客だけでなく、親族を訪ねる帰省需要が年間を通じて見込める。観光は季節で波打つが、帰省は読みやすい。この安定した需要が、新路線の搭乗率の底を支える可能性がある。

長距離の格安運航は過去に何度も壁にぶつかった

東南アジアから中央アジア、欧州、南アジアへ網を広げる方針は、機材の稼働を守る意味では筋が通る。だが長距離を安く飛ばす試みは、過去に苦戦が目立つ。エアアジアXは2020年に経営再建へ追い込まれ、ノルウェー・エアシャトルも長距離路線から撤退した。

共通の弱点は、便数が少ないために、1回の欠航や空席が収益を大きく揺らすことだ。ベトジェットが同じ道をたどるかどうかは、地域内の短中距離で稼ぐ安定収益が、長距離の変動を吸収できるかにかかっている。

ビジネスへの影響

旅行者と出張者にとっての選択肢の広がり

路線が増えると、ベトナム経由で中央アジアや南アジアへ安く向かう選択肢が増える。ただし格安航空は、遅延や欠航が起きたときの振替対応が限られる。乗り継ぎは同じ予約でまとめて買うか、数時間以上の余裕を見ておくのが安全だ。運賃を比べるときは、預け荷物の料金と重量の上限も含めて総額で判断したい。

旅行会社と物流事業者が動くべき時期

西シドニー線のような新路線は、開設直後に運賃を絞って需要を試す傾向がある。団体手配や送客の提携を狙うなら、就航前の2026年内に条件を詰めておくと有利だ。貨物は旅客機の床下に積める量が小さい。小口の越境ECには使えるが、大口輸送の代替は期待しにくい。

同業者と投資家が見るべき数字

売上の増加率だけを見ると、実態を読み誤る。確認したいのは、1座席あたりの収入と費用、搭乗率、そして利益率の推移である。利益率が2%台なら、燃料費の上昇ひとつで赤字に転じかねない。今後は、長距離の新路線が開設後にどの程度の搭乗率を保てるかを、決算説明で開示するかどうかが一つの判断材料になる。

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